脳梗塞の位置や大きさを確認するMRI、CT、血管の状態を調べるMRA

脳ドックの切り札とされる画像診断装置はこの20年で大きな進歩を遂げました。画像が鮮明になり、小さな病変も発見できるのは勿論、立体画像を描くことも可能となりました。しかも、検査に要する時間は機器の進化に伴い、年々短くなっています。

未破裂脳動脈瘤を早期発見

微小な病変の発見が可能となったため、早期診断、早期治療が可能となり、未破裂脳動脈瘤が破裂して、クモ膜下出血を起こす前にクリッピング処置などを行うことできるようになりました。

MRI(磁気共鳴撮影装置)は、磁気と電波を使って体の断面像を描き出す装置です。人間の体の70%は水からできています。水を構成する水素原子を強い磁場に入れると回転し、一定の方向に向きます。

このとき電波を当てると水素原子が振動をはじめ(共鳴)し、電波を止めると元に戻ります。水素原子が共鳴し始めてから元の状態に戻るまでの時間を数値化し、濃淡(コントラスト)に変えて描き出したのがMRI画像です。

MRIには以下のような特徴があるので、脳ドックに欠かせない検査となっています。

  • CTに比べると、画像のコントラストが鮮明です。
  • CTは水平に切った輪切りの像しか描けないのに対し、MRIは縦・横・斜めなどあらゆる方向から脳の断面を描き出すことができます。これにより、未破裂脳動脈瘤や無症候性脳梗塞など、小さな病変が発見しやすくなりました。
  • MRIで使用するのは、磁気と電波ですので、放射線の被爆リスクはゼロです。

ただし、磁気と電波を使う検査ですので、心臓にペースメーカーを埋め込んでいる人、くも膜下出血や未破裂脳動脈瘤が見つかって、脳動脈瘤にクリッピング法による治療を受けている人は、MRI検査を受けることができません。近年は磁気の影響を受けないクリップが開発されているので、最近治療を受けた人は成約がない場合もあるので、主治医に確認してもらいましょう。

MRA(磁気共鳴血管撮影装置)は造影剤を使用しない血管撮影法です。上記のMRIは、血液のように流れるものはエネルギーを返さないので、黒く抜けて見えます。この黒い部分だけを画像で再構成したのがMRAで血管だけを映し出すことができます。

従来、血管の撮影は造影剤を注射してX線で撮影していましたが、患者さんに身体的、精神的な負担が問題となっていました。

これに対して、MRAはMRIと同じ装置を使い、磁気と電波だけで画像を再構成して、血管だけを映し出すことができます。MRAは造影剤を使用しないので、身体への負担もなく、放射線の被曝も全くありません。診断上、非常に重要な未破裂脳動脈瘤や閉塞性脳血管の病変も発見することができます。

脳ドックで重要なのはMRIやMRAなどの画像診断だけではありません。血圧測定、心電図、尿検査、血液検査など、すべての項目が脳卒中に深く関係しています。