脳ドックで未破裂脳動脈瘤を早期発見し、クモ膜下出血を予防しましょう

脳は内側から軟膜、クモ膜、硬膜という3層の膜によって保護されています。軟膜とクモ膜の間をクモ膜下腔といい、髄液で満たされており、外部からの衝撃を和らげる働きを担っています。脳底部の動脈が破れて、このクモ膜下腔に出血するのが「クモ膜下出血」です。

血液は、強い圧力を受けながら血管の中を流れていますが、血管の内膜に傷やコブ(未破裂脳動脈瘤)があると、血流に押されて、どんどん大きくなってしまいます。このコブが破裂して大出血を起こしてしまうのです。

未破裂脳動脈瘤には、新生児にも発見される先天的なものと、後天的にできる場合とがあります。未破裂脳動脈瘤は年齢や生活習慣とは関係なくできるのです。未破裂脳動脈瘤が破裂すると、半数近くの人が死亡し、助かった方としても多くの方が合併症で亡くなりますし、思い後遺症が残る人もいます。

現在のところ、脳ドックの画像診断(MRI)だけが小さな未破裂脳動脈瘤を早期発見するたった一つの方法です。コブが見つかった場合、クリップをかけて破裂しないように手術すればそれで治療は完了し、破裂の心配はありません。

しかし、いったん破裂すると、血管の周りに血液が流れ出てしまいますので、クリップをかけても流れ出て血液が元に戻ることはありません。血液から血管があふれ出ることがなぜいけないのかというと、血管がけいれんをおこて縮んで細くなり、血液の流れが悪くなる脳血管攣縮という合併症が起きるからです。

脳細胞は血管を通じて活動に必要な酸素と栄養を受け取っていますが、脳血管攣縮が起きて血管が細くなると、十分な酸素と栄養が行き渡らなくなってしまうのです。酸素と栄養が不足した細胞は壊死してしまうので、脳梗塞と同じ状態になります。

脳血管攣縮は、クモ膜下出血を発症してから4~14日間に起こる合併症で、現在のところ根本的な治療法は存在しません。手術の際に血管の周りに出た血液は、取り除く必要があります。以前は難しい処置でしたが、近年はきれいに除去することができるようになりました。それでも、脳血管攣縮が起きてしまうと、多くの方が死亡してしまいます。

クモ膜下出血は、40~60歳代の働き盛りに最も多く発症します。ほとんどは無症状で前触れもなく突然健康な人を襲う恐ろしい病気で、およそ半数の人が亡くなります。早期治療で命を取り留めても、治療後に脳血管攣縮が起こって死亡するケースも少なくありません。

治療がうまくいっても約30%の人は言語障害や片麻痺などの重大な後遺症が残るため、命を取り留めても社会復帰を果たせる人は3人に1人に過ぎません。